金融メルトダウンの背後に誰がいるのか?
市場操作および機関投資家

      by Michel Chossudovsky (2008年10月11日) 



市場は、激しく操作されている。メルトダウンの背後にある駆動力は投機的な売買である。“プライベートな規制”システムは投機家達の利益に役立っている。

市場が下落するとき、ほとんどの個人投資家が損をするのに対し、機関投機家は金融崩壊のときに儲ける。

事実、市場崩壊を誘発することは、非常に儲かる企てである。

証券取引委員会(SEC)の規制者が投機的取引を支援する環境を創ったという兆候がある。

株式市場が崩壊する時に儲けるために利用できる、先物、オプション、インデックス・ファンド、デリバティブ証券などを含む何通りかの手段がある。

下がれば下がるほど、儲けは大きくなる。

下げさせている連中は、その下り坂でも投機している。

先見の明と内部情報によって、市場価格の崩壊は、適切な時期に適切な方向に市場を操作する能力を持っている、えり抜きの有力な投機家が儲かって、マネーを作り出す機会を与える。


短期の売り(Short Selling)

金融メルトダウンからマネーを作り出すために投機家が利用する一つの重要な手段は、“短期の売り”である。

“短期の売り”は、持っていない大量の株を売ること、および取引を完成させて利益を現金化するために、価格が崩壊したあと、現物市場でそれらを買うことからなる。

会社の価値を下げることにおける短期の売りの役割は、十分に裏付けられている。リーマン、メリル・
リンチ、ベアー・スターンズの破綻は、一つには、短期の売りによるものである。 

短期の売りは、通貨市場においても広く利用されてきた。それは、タイのバーツ、韓国のウォン、インドネシアのルピアを暴落させるため、1997年のアジア危機の間、投機家達によって利用された主要な手段の一つであった。

主要な通貨市場における投機は、進行中の金融危機も特徴づける。カナダドルの通貨価値は大きく揺さぶられていて、たとえばこの2〜3日の取引期間中に10%価値が下がっている。


短期の売りの一時的禁止(Temporary Ban on Short Selling)

9月15日のブラックマンデーの株価市場メルトダウンのあと、証券取引委員会(SEC)は一時的に短期の売りを禁止した。痛烈な皮肉において、SECは“規制によって短期の売りから保護される”会社名をリストアップした。SECの9月18日の短期売り禁止は、銀行、保険会社、および他の金融サービス会社に大きく関係した。

“保護リスト”にあげられた効果はなかった。それは“ヒットリスト”にあげたも同然であった。もし、SECがインデックス・ファンドやオプションを含む投機的取引の全ての形式を凍結するのと抱き合わせで、短期の売りを完全に永久に禁止する策を取っていたならば、それはマーケットのボラティリティを縮小し、メルトダウンを鈍らせることに寄与したであろう。

短期売り禁止は、保護リストを確立するという観点で実際に適用された。それは10月8日水曜日の深夜に期限が切れた。

市場が開いた翌日の10月9日木曜日の朝、“保護リスト”にあげられた会社は“非保護”になり、投機的な猛攻撃の最初のターゲットになり、9日(木)と10日(金)のダウジョーンズの劇的な崩落を導いた。

事の成り行きは完全に予測できた。 短期売り禁止の解除は、株価市場価値の没落を目立たせた。ヒットリスト上の会社は、投機的な猛攻撃の最初の犠牲となった。

短期売り禁止が解除されるや否や、モルガン・スタンレーの株は10月9日に26%、その翌日に更に25%下落した。


金融戦争(Financial warfare)

モルガン・スタンレーの没落は金融上のライバルによって計られたという証拠がある。9月18日の短期の売りの禁止に先立つ日、モルガン・スタンレーは、ライバルの投機的攻撃の対象であった:

モルガン・スタンレーのCEOであるJohn Mackは、水曜日[9月17日]の内部メモにおいて、従業員に、「何が起こっているのか? それは私には良く分かる。 我々は恐怖と噂によって支配されている市場の真ん中にいて、短期の売り手が我々の株を下落させている。」と伝えた。(Financial Times, September 17, 2008)

モルガン・スタンレーは、格付け機関ムーディーズによって表明された"(信用)不確か"の対象でもあって、そのことが投資家達のモルガン・スタンレーの株の手放しに寄与した。 

ムーディーズは、「グローバルな資本主義市場における予期される景気の下降は、モルガン・スタンレーの2009年の収入と利益見通しを押し下げるであろう。また、その下げ幅は今期の下げ幅よりも大きくなるであろう」という見通しを引用した。



対照的に、ロックフェラー家によって支配されているJPモルガン・チェイスは、ほぼ12%上げた。








金融戦争の勝者は、JPモルガン・チェイスとバンク・アメリカである。両方の銀行経営機関は、合衆国銀行経営の全眺望において、彼らの支配力を強化した。彼らは、ライバルの金融機関を追放し、あるいは征服するために金融危機を利用した。

市場操作から生じた富の集中および金融権力の集中は空前である。



規制者は投機家に利益を供する(Regulators Serve the Interests of Speculators)

SECは、短期の売り禁止が没落を悪化させるであろうことを十分に知っていた。 

何故、彼らはそれを実行したのか? 彼らは彼らの決定をどのように正当化したのか? 彼らは誰のために奉仕しているのか?

歪曲されたロジックにおいて、機関投資家に利益を大いに供するSECは、アカデミックな研究論文を引用して、短期の売りは市場の不安定性を減少させることに寄与していると強く主張し、それによって9月18日の短期の売り禁止の撤回を正当化している。

 

トップページへ戻る