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第15章 お金と価格

したがって、国民配当による新しいお金の分配は、必要なときに国の通貨供給量を増やし、そのお金を直接消費者の手に渡す手段である。 

しかし、消費者に有益であるためには、このお金の分配は消費者の購買力の現実的な増大にならねばならない。

さて、その購買力であるが、二つの要因に依存している。それは、買い手の手の中にあるお金の量と、生産品の小売価格である。

もし、生産品の価格が下がるならば、たとえお金の増加がなくとも、消費者の購買力は増加する。今、バターを買うために10ドル持っているとしよう。もし、バターの価格がポンド当たり2.5ドルならば、4ポンドのバターを買える購買力を持っていることになる。そして、もし、バターの価格がポンド当たり2ドルに下がるならば、購買力は増加し、5ポンドのバターを買うことができる。

また、価格が上がるならば、消費者の購買力に悪影響がある。そして、その場合、たとえお金の増加があったとしても、その効果がないこともあり得る。このように、1967年に200ドルを、1987年に400ドルを稼いだ労働者は損をしているであろう。なぜならば、生活費はその20年間において2倍以上になっているからである。カナダにおいて1967年に200ドルで買えたものを1987年に買うためには少なくとも772ドルが必要である。

首尾一貫した生産品価格の上昇のため、非常に多くの労働者が要求する賃上げによっても、持続的な改善が得られない訳である。雇用者はお金を作れないので、もし、労働者により多く支払わねばならないならば、破産しないためにはより高い価格で生産品を売ることを強いられるからである。

国民配当の場合はどうかと言うと、政府によって労働とは無関係に作られ分配されるお金なので、価格に含まれることはない。

しかしながら、大衆の手の中により多くのお金があると、たとえ生産品の製造原価がアップしていなかろうと、小売業者が小売価格を上げる傾向にあるかも知れない。

国民配当をすると同時に、価格の不適切な上昇に対するブレーキを掛けないような通貨改革は、不完全な改革である。それは、とめどの無いインフレという破局に至るかも知れない。

一般的に天井価格を設定したり、価格を凍結させるような独断的な価格設定をしても、生産意欲がそがれるという有害な影響があるかも知れない。生産高が減少したならば、最も確実に価格上昇が発生する。法律制定者がそのようなことをしたら、彼が求めていることと正反対の結果になる。彼はインフレーションと不器用に戦ってインフレーションを引き起こしてしまう。法的拘束を逃れた売買が行われ、闇市場でインフレーションが発生する。 

社会信用は、自動的にインフレーションと戦うための技巧を前面に置いている。それは、“調整価格”あるいは代償性割引という技巧を提案するものであり、全購買力を全生産品価格のレベルに釣り合せるためにお金を発行する方法の一部である。



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