原文:http://www.michaeljournal.org/plenty.htm         訳者:sean007a

 この潤沢の時代において(In This Age of Plenty )

  この410ページの本は、金融や通貨システムの新しい概念を提示している。そして、それは社会を純粋に経済的な問題から社会を解放するものである。著者のルイ・エバンは、スコットランド人の技術者であるクリフォード・ヒュー・ダグラスが考え付いた社会信用金融提案の概要を説明している。

(フランス語初版に対する)序文

この本は社会信用を取り扱ったものであるが、社会信用を一般的に広く見渡したものではない。社会信用は実際、文明化の全体的なオリエンテーションであり、その経済的様相だけではなく、社会的・政治的様相も取り扱うものである。世界はこの啓発的な教義に対してダグラスに恩恵をこうむっているが、最初に政治秩序を正常にしないことには、社会信用の構想に沿って経済秩序を正常にすることは不可能だとさえ、我々は信じている。

しかしながら、この本においては、君臨している欠陥ある金融システムの政治への影響に付随する少しの思索を除いて、経済の目的および社会信用の金融提案に我々の研究を限定する。

ルイ・エバン

この本のタイトル―この潤沢の時代において―は、我々は量的に恵まれた経済を今扱おうとしていることを明らかに示している。そこでは、近代的な生産の巨大な可能性を利用する機会が万民にとってより容易になっている。

“古典経済学”はゴールド、あるいは他の何らかの希少品の存在に規制されていた。生産高自体が少なかった時代のことである。しかし、自動生産の要求に適合するためには、希少性に連結するような手段を使い続けることは、進歩および論理に反する。

本書の第1部において、誰もが直ちに認める本質的で非常に単純な考えを述べるが、現行の経済組織体ではほとんど完全に無視されていることである。最早、その目的は手段を導いていない。現行の通貨システムを少し勉強すれば、お金が奉仕すべきところで逆に支配していることが分かる。その治療薬として社会信用提案を紹介するが、概要を説明するだけで、その適用方法には立ち入らない。その問題は、操作手法を開発するよりも考えに対する合意を得ることがより重要であると信じるものであるが、目的を見失って久しく、手段の複雑さという泥沼にはまることに慣れた精神にとっては、単純過ぎるだけではなく大胆過ぎるように思えるであろう。それで、社会信用教義の正当性を示すために、数章を費やすことにする。

第2部では、社会信用の様々な様相の理解に光を投げる演説および記事を収録するが、それらはお互いに必ずしも関連性はない。

本書を世に出すに当たり、特別な経済知識を持っていない普通の人々が読者だと想定して執筆している。特殊な話題に言及する時でさえ、できるだけ専門用語の使用を避けているが、読者を啓発するどころか退屈させることを危惧してである。大多数の人々が容易に理解できるように書く努力をしたが、それは経済というものは全ての人々に奉仕するためのものであるという信念によるものでもある。

モントリオール、1946年5月1日

ルイ・エバン         

この版に対する序文 (1996年)

フランス語の初版が出版されて50年経ち、ルイ・エバンの本『この潤沢の時代において』の英語版が出版された。1935年に、ルイ・エバンはフランス語圏カナダにおいて社会信用の普及を始めたが、1996年の今では世界中の数カ国において、彼の運動を紹介するためのフランス語定期刊行物「ヴェルス・デメイン」と同様、英語版定期刊行物「ミカエル」を定期購読する多数の人々がいる。   (ルイ・エバンの社会信用運動の進展についてのより詳しいことは、伝記メモを参照のこと)

本書は、1988年に出版されたフランス語での第4版(改訂・追記版)を英訳したものである。この1988年版に、10個の章と6つ付録が追加されて本書となっている。(これら追加された部分は、1988年以降の"ミカエル”の出版物からの引用がほとんどである。)

「この潤沢の時代において」のポーランド語版

 Kraszewski司教

ルイ・エバンの“この潤沢の時代において”は、のちにポーランドのワルシャワ-プラハ司教監督管区の司教総代理になったZigniew Jozef Kraszewski司教によって、1933年にポーランド語で出版された。(注記:Kraszewski司教は、2004年4月4日に死去) 以下に、Kraszewski司教によって書かれたルイ・エバンの本への序文を示す。

“カトリック教徒が教会の社会的教義の中で学んだものは、社会主義と資本主義の間の道である。長年、この教義はカナダで拡散しているが、社会信用理論として知られている。私がポーランドの読者に紹介するルイ・エバンの「この潤沢の時代において」は、カトリックの社会的教義の説明であり、カナダ人だけのためのものではない。この本は社会問題に対して心を開く如何なる読者にとっても、指導的な話題を豊富に含んでいる。この本は偉大な理論家や学者のために書かれたものではなく、全ての人々のために書かれている。それ故、この本はポーランド人にとって貴重であり、特に我々が現在経験しているVistula川の第二の奇跡(共産主義転覆の奇跡)のときにおいて貴重である。

“ポーランドは奇跡的にその自由と主権を獲得するのに成功した。何年も我々を捕虜としてきた共産主義の荒廃のあと、我々にはカトリック教義に基づいた社会正義の正しい道を選ぶ義務がある。この本はそれを達成するために大いに助けになると私は考える。ワルシャワのKamionku大聖堂に安置されている勝利の聖母の保護を全ての読者に委ねる。”  



目 次

第1部 ― 社会信用を通しての必需品サービスでの商品
 PART I  — Goods at the service of needs through Social Credit

Social Credit: not  Socialism, not a political party
  社会信用:社会主義ではなく、政党でもなく

Chapter 1 — A Few Principles
           少しの原理・原則

Chapter 2 — Economics
          経済
   Chapter 3 — The Consumers
          消費者

Chapter 4 — Goods
          商品
  Chapter 5 — Specialization — The Machine
          専門化 − 機械

Chapter 6 — Poverty amidst Plenty
          豊かさの中での貧困

Chapter 7 — The Symbol and the Thing
          シンボルと物
  Chapter 8 — The Birth and Death of Money
          お金の誕生と死滅
  Chapter 9 — The Monetary Defect
          通貨の欠陥

Chapter 10 — Putting the Monetary System Right
          通貨システムの正常化

Chapter 11 — The Rights of Each One to the Bare Necessities of Life
          ぎりぎりの生活必需品に対する各人の権利
  Chapter 12 — What is a Dividend?
           配当とは何か
  Chapter 13 — Heritage and Heirs
           遺産と相続人
  Chapter 14 — The National Dividend
           国民配当

Chapter 15 — Money and Prices
           お金と価格

Chapter 16 — Price Adjustment
           価格調整

Chapter 17 — The National Credit
           国家の信用
  Chapter 18 — The Monetary Mechanism of Social Credit
            社会信用通貨メカニズム

Part II  — A Few Talks and Articles on Various Aspects of Social Credit
       社会信用の様々な様相についての幾つかの談話および記事

Chapter 19 — Society Exists For All Its Members
           社会はその全ての構成員のために存在する

Chapter 20 — Minimum Security, Maximum Freedom
           最小の保障と最大の自由

Chapter 21 — Politics at the Service of the People
           人々への奉仕としての政治

Chapter 22 — A Superpower Dominates Governments
           超権力が政府を支配している

Chapter 23 — The Monetary Power Resides in the Banks
           通貨権力は銀行の中に存在する

Chapter 24 — Liberal Leader Mackenzie King Said in 1935
           自由党党首マッケンジー・キングが1935年に言った

Chapter 25 — Money, or Credit, Is a Social Instrument
           お金あるいは信用は社会の道具である

Chapter 26 — The Goldsmith Who Became a Banker, a True Story
           銀行家になったゴールドスミス―本当にあった話
  Chapter 27 — A Lesson From a Bank Account
            銀行口座からの学習
  Chapter 28 — What Would Social Credit Do For You?
           社会信用はあなたに何をしてくれるのか

Chapter 29 — Applied Science, a Common Good
           応用科学、一つの公益
  Chapter 30 — A Corrupted Monetary System

Chapter 31 — Social Credit puts money in its proper place

Chapter 32 — Should Money Claim Interest?

Chapter 33 — Interest on Newly-Created Money Is Robbery

Chapter 34 — The Public-Debt Problem

Chapter 35 — The Labour Question, A Money Problem

Chapter 36 — There Is No Unemployment Problem

Chapter 37 — Full Income Instead of Full Employment

Chapter 38 — Equality Between Money-Figures and Price-Figures

Chapter 39 — The Environment — Where Money Is Concerned

Chapter 40 — The Government Must Create Its Own Money

Chapter 41 — To Caesar What Is Caesar's

Chapter 42 — For a Better Understanding of Social Credit

Chapter 43 — Social Credit and Foreign Trade

Chapter 44 — At the Retailer's

Chapter 45 — The Stocker's Lesson

Chapter 46 — The Monetization of Progress

Chapter 47 — 30 Million Capitalists

Chapter 48 — Men of the Right, Empty-Handed

Chapter 49 — The History of Banking Control in the United States

Chapter 50 — Social Credit in the United States in 1932

Chapter 51 — The Aim of the Financiers: a One-World Government

Chapter 52 — Social Credit and the teachings of the Popes

Appendix A — Social Credit and the Catholic doctrine, a study by theologians 
           社会信用とカトリック教会の教義、神学者の研究

Appendix B — The Bank of Canada Must Finance our Country, Debt-Free

Appendix C - Money, Questions and Answers, by Father Charles Coughlin

Appendix D — Words of Thomas Edison

Appendix E — Money Is Created by Banks, Evidence Given by Graham Towers

Louis Even — Biographical notes
          ルイ・エバン―伝記メモ

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