ホテルの従業員は結構インパクトのある人が多かったと思います。
コックさんは正社員としては3人で、その他に助っ人的な人が
何人かいました。正社員のコックさんのなかでも、一番年長のTさんは「ちゅうちゃん」と
よばれていました。耳と言葉が不自由ですが、ハンバーグ、カレー、スープなど
重要なところをまかされていました。料理長(チーフ)のMさんのお父さんがチーフの
ときから仕込まれたのだと思います。耳が不自由なので、私たちウエイターの
注文もコース料理のスープがポタージュのときは「ポタ」、コンソメのときは
「チョメ」と言うことになっていました。ちゅうちゃんは口の動きを見て
「分かった」といって作業に入るのでした。口の動きを大きくすれば、
声を出さなくても通じるので、疲れているときなどこのほうがかえって楽に思ったくらいです。
チーフのMさんに注意されたときなどは、「(まだまだ)子どもだね。」と負け惜しみを
言っていました。(ごく限られた言葉はしゃべれる。)
ホテルのすぐ近くに住んでいましたが数年前になくなりました。
チーフのMさんは、お父さんの代からなぎさホテルのコックさんだったようで
ファニーフェイスでよくしゃべる明るい方でした。もう一人の正社員の
Iさんは大柄で無口でこわい感じでしたが、うちとけるといい人だと分かりました。
調理の腕はよくて、オムレツなどは角が鋭角にピシッときまっていました。
オムライスを作ると大盛りになってしまい、お客にだしたとき、
「こんなに食べれない」と笑われたことがありました。