夏休み、冬休みなど部屋が満室になる時期はレストランも非常に忙しくなります。
特に夏はガーデンへも軽食を出しており、料理の運搬距離も長く、暑く、風で紙ナプキン
を飛ばされたり、後片付けも面倒くさく、大変でした。文字どおり目の回る忙しさで
浪人時代に増えた体重が一挙に戻ったのを覚えています。
しかし、シーズンオフの平日などは1日にお客が1〜2組ということもあったように
思います。ひまでひまで時計を見ても時間が少しも進まない感じです。
ひまなときにやる仕事は、主にナプキンの王冠折り、バター作り、窓拭きでした。
フランス料理のレストランなので、テーブルには常に食器をセットし、ナプキンの王冠を立てておきます。
王冠とはナプキンをマックの店員あるいはサンダーバードの隊員の帽子のような形に折ったものです。
何十枚も折っていると極めて眠くなります。バターは1ポンドの固まりをまず1.5cm角位のさいころに
切ります。これを洗濯板状のぎざぎざのついた卓球のラケットを小さくしたような二枚の木の板の間に
はさんで、丸めます。バレーボールかサッカーボールのような形になります。これを溶けないように
氷水をはったボールの中に入れていきます。この作業も最初は面白かったです。
窓拭きは、ぞうきんを絞らず窓をぬらし、ワイパーでぬぐうという作業です。窓が大きい
ので、思い切り背を伸ばさないと上まで届きません。必然的に袖口から水が流れ込み
脇の下までつたいます。冬など実に不快な作業でした。
このような仕事も終わるとついにやることがなくなります。窓の外の海は夕焼けです。
夕日は伊豆半島に沈みます。夕日はじっと見ているとみるみるうちに沈むものです。
レジをしめて、翌朝の朝食のセッティングをして、8時には帰ります。