−その1−

 私が今までに見つけた「なぎさホテル」が記述されている本を紹介します。

1.「ヨコハマ建築慕情」 吉田鋼市 著 鹿島出版会

 タイトルは「ヨコハマ」となっていますが、神奈川県全域に残る近代建築を紹介 しています。なぎさホテルは第9章ジャポニスム〜ホテル建築で2ページに 渡って紹介されています。載っている写真はこのホームページの「在りし日のなぎさホテル 〜外観」の「1.正面玄関側全景」とほぼ同じアングルです。 この本によれば、なぎさホテルはスペインのヴィラ(郊外の別荘)風の建築だそうで オープン当初は屋根瓦は青く、窓枠は茶色ではなく壁と同じ白色だったそうです。 しかし、このカラーリングはあまりピンときません。

2.「近代建築ガイドブック(関東編)」 東京建築探偵団 著 鹿島出版会

 この本は関東に残る近代建築を数多く紹介しています。なぎさホテルは関東環状別荘帯・湘南コース という章に約2.5cm×3.5cmの小さな白黒写真と4行に渡って施工者、建築年、所在地を記述 しているだけで、解説は全くなしというさびしいものです。

3.「渚ホテルの朝食」 江藤 淳 著 文芸春秋

 一編が2〜3ページほどの短いエッセイを集めたものです。著者が育った鎌倉の風物や出身の 慶応大学のこと、好きなプロ野球のことなどが書かれています。タイトルにもなった「渚ホテルの朝食」は著者が 小学校にあがる前(昭和13年頃)、父親と二人でなぎさホテルに泊まったことを回想した ものです。このエッセイを読んでそうそうと肯いたことが二点ありました。
 ひとつはホテルの中のにおいです。著者は浜辺の磯の香りと対照的にホテルの中は一歩踏み入れた瞬間から 西洋の匂いがしてそれが快かったと述べています。全く私も同感で、ホテルの中は我々が普段の 生活している、家、学校、会社とは全く違う匂いがしていました。著者は洗濯の行き届いた リネンのせいではなかったかと結論づけています。私もそう思います。ホテルは部屋でもレストラン でも白いリネンをたくさん使っていて、日常生活ではリネンなどあまり使わないので、これが 非日常の感覚を呼び起こすのだと思います。
 もう一点は朝食のボイルドエッグです。なぎさホテルでは朝食のコースの卵料理はフライドエッグ、 ポーチドエッグ、スクランブルエッグ、ボイルドエッグ、プレーンオムレツの5種類がありました。 この中で最も食べにくいのがボイルドエッグでした。朝食の食器はナイフ、フォーク、バターナイフ、 ティースプーン、パン皿がテーブルの上に既にセットされています。つまりナイフ、フォーク でメインの卵料理を食べますが、エッグスタンドに卵一個立て、もう一個をその横において サービスするボイルドエッグはナイフ、フォークではどう考えても食べられない代物です。 それで必ず小さなスプーンを添えるよう指示されていました。 半熟なのでスプーンですくって食べます。しかし、殻の内側に白身が残るので、西洋の割には合理的では ない食べ方と思っていました。また、普通の茹で卵のように茹でた後水につけていないので、 手で殻を剥くのも至難の技です。著者のお父さんは器用にナイフで殻を剥いて食べられるように してくれたと書かれています。相当に西洋通なお父さんだったのだろうと思います。
 昭和13年頃も、私がバイトしていた昭和60〜63年頃も全く変わらないスタイルで料理を 出していたことが分かり、なぜか嬉しくなりました。

4.「We湘南−かまくらからの手紙 VOL.82」 かまくら春秋社

 年2回発行の湘南地方紹介のローカル誌です。1997年11月20日発行の本誌のP.65から 5ページにわたり「逗子なぎさホテルが残したもの」という特集記事が載っています。 記事の内容は閉館の日の様子や保存運動が実を結ばなかった経緯などで、写真としては 米軍接収中で星条旗がたなびき、ジープが乗り入れているホテル全景、国道134号線がない頃の ガーデンの様子、ビリヤード場などが載っています。

 この他にもなぎさホテルの記述のある本を知っている人はどうぞ教えて下さい。


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