金融監督庁・大蔵省告示第22号(平成12年6月23日)


別表

I. 定義

この表において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによる。

1.

リスク 保険事故発生率が悪化する不確実性をいう。

2.

危険発生率 テスト実施期間の各年度において設定される、通常の予測の範囲でリスクをカバーする保険事故発生率をいう。

3.

基準日 負債十分性テストを行う事業年度末をいう。

4.

基準年度 負債十分性テストを行う基準日が含まれる事業年度をいう。

5.

将来給付額 保険金の将来の支出額の累計額をいう。

6.

算出方法書 法第4条第2項第4号第187条第3項第4号又は第220条第3項第4号に掲げる書類のことをいう。

7.

予定発生率 算出方法書に記載された、保険事故の発生率のことをいう。

8.

10年国債利回り 基準日前の直近に発行された利付国庫債券(10年)の応募者利回り(保険業法第116条第2項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成8年大蔵省告示第48号。以下「告示」という。)第4項に規定する応募者利回りをいう。9.において同じ。)をいう。

9.

20年国債利回り 基準日前の直近に発行された利付国庫債券(20年)の応募者利回りをいう。

10.

第1号利差率 10年国債利回り及び20年国債利回りの平均値から基準年度の翌事業年度期首における告示第5項に定める予定利率(同項の表1の第1号保険契約(以下単に「第1号保険契約」という。)に適用されるものに限る。)を減じた率と零のいずれか大きい方をいう。

11.

第2号利差率 10年国債利回りから基準年度の翌事業年度期首における告示第5項に定める予定利率(同項の表1の第2号保険契約(以下単に「第2号保険契約」という。)に適用されるものに限る。)を減じた率と零のいずれか大きい方をいう。

12.

第3号利差率 10年国債利回りから基準年度の翌事業年度期首における告示第7項に定める予定利率を減じた率と零のいずれか大きい方をいう。

II. 危険発生率の算出

危険発生率の算出にあたっては、次に掲げる基準を満たさなければならない。

1.

危険発生率は保険事故発生率が変動することによる保険金の増加を一定の確率でカバーする保険事故発生率とし、テスト実施期間(少なくとも10年間行うものとし、保険期間の残存期間が1年間を超え10年間未満の場合は当該残存期間)の各年度において、過去の保険事故の実績の推移等から適切な保険数理の方法を用いて設定すること。この場合において、以下に留意することとする。

○1

前事業年度までの保険事故発生の実績値を基礎として、保険契約年度を単位とし、かつ保険契約の経過年数別に保険事故が発生した年度に対応して算出すること。

○2

原則として基礎率を同じくする契約区分ごとに実施することとするが、給付事由及びリスク特性等の観点から同等の契約区分であれば、まとめて実施してよいこととする。なお、被保険者数が少なく統計的な取り扱いが困難な場合は、予定発生率の算出に用いたデータ等を活用するなど保険数理上適切な手法を用いて算出することができる。

○3

テスト実施期間の各年度の危険発生率は、前事業年度より小さい危険発生率としてはならない。

2.

危険発生率は、一定の確率を97.7%として設定すること。

III. 負債十分性テストを行う保険契約の区分の選出
1.

負債十分性テストを行う保険契約(次の6に掲げる保険契約等を除く。)の区分は、次の1が2を上回る契約区分(危険発生率の算出において、複数の契約区分をまとめた場合は当該契約区分)とする。

○1

危険発生率を基に、少なくとも10年間の将来給付額を算出したもの。

○2

予定発生率を基に、少なくとも10年間の将来給付額を算出したもの。

2.

将来給付額の算出にあたっては、危険発生率以外の計算基礎については算出方法書に記載された責任準備金の計算基礎を使用する。

3.

将来給付額は、基礎率を同じくする契約区分単位で算出する。

4.

将来給付額は、予定発生率又は基準日までに観測されるデータを基に設定される危険発生率に、基準日における保有契約高を基に算出方法書に記載された計算基礎を用いて算出されるテスト実施期間の各年度の保有契約高を乗じて算出するものとする。

5.

4の算出の際、基準日前6箇月を超えない期間において仮基準日を設け、当該仮基準日までに観測されるデータを基に設定される危険発生率と当該仮基準日における保有契約高を利用して4の算出を行ってよい。この際、当該仮基準日から基準日までの間の保有契約高、保有契約高の構成等が変化している場合には、必要に応じて補正を行うものとする。

6.

次に掲げる保険契約等は、負債十分性テストの対象外とする。

○1

保険期間が1年以下の保険契約(当該保険契約の更新時において保険料率の変更をしないことを約した保険契約を除く。)

○2

規則第212条第1項第5号に規定する傷害保険契約その他これに準ずる給付を行う保険契約

○3

保険事故発生率が十分小さく、特約又は主たる給付に付随する給付であって、債務の履行に支障を来たすおそれが極めて低い保険給付

IV.負債十分性テストの実施要領

負債十分性テストは、次に掲げる基準に基づき適切な保険数理の方法を用いて実施するものとする。実績値を用いることが規定されているものを規定どおり用いることが適切でないことが明らかな場合は、必要な補正を行うものとする。

1.

負債十分性テストを行う期間は、少なくとも10年間とする。

2.

新契約高は、見込まないものとする。

3.

事業費は、新規契約締結に係る事業費を控除した基準年度の事業費を基に保有契約の状況を反映したものとする。

4.

保険事故発生率は、危険発生率とする。

5.

死亡率は、基準年度又は基準年度を含む過去3年間の死亡率の平均とする。ただし、実績データが少なく統計的な取り扱いが困難な場合は、予定死亡率の算出に用いたデータ等を被保険者集団の特性や生存保障性を考慮した補正を行った上で、使用することができる。

6.

金利は、少なくとも次に掲げる金利シナリオを含まなければならないものとする。

○1

10年国債利回り(第1号保険契約(第2号保険契約のうち告示第6項の規定を適用した保険契約を含む。)にあっては、10年国債利回り及び20年国債利回りの平均値。○2において同じ。)を基準年度の金利とし、翌事業年度から5年間にわたり、毎事業年度期首に、第3号利差率(第1号保険契約(第2号保険契約のうち告示第6項の規定を適用した保険契約を含む。)にあっては第1号利差率、第2号保険契約(告示第6項の規定を適用した保険契約を除く。)にあっては第2号利差率。○2において同じ。)を5で除した割合ずつ低下し、以降は一定で推移させたもの

○2

10年国債利回りを基準年度の金利とし、翌事業年度期首に第3号利差率を2で除した割合低下し、以降は一定で推移させたもの

7.

保険契約継続率は、基準年度の保険契約継続率又は基準年度を含む過去3年間の保険契約継続率の平均とする。

8.

資産配分及び資産構成は、基準年度の資産配分及び資産構成をもとに合理的に設定したものとする。

9.

将来の株式、不動産の価格又は為替レートの変動による損益は、考慮しないものとする。

10.

配当率は、基準年度の配当率とする。

11.

負債十分性テストを行った結果、当該テスト期間中の事業年度末に必要な責任準備金の額に対応した資産の額の不足額が生じた場合は、基準年度の責任準備金が不足しているものと判断し、当該不足額の割引現在価値の最大値となるものを基準年度において追加して責任準備金を積立てる必要があることを、意見書に記載しなければならない。


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