少年サッカー (佐藤治夫) 本文へジャンプ
少年サッカー



指導者として


サポーターとして

子供達にとって,保護者は最初のサポーターであり、かつ、最高のサポーターです。ところで「サポーター」ってナンでしょう。「ファン」や「応援団」というだけでは足りないような気がします。かと言って,「先生」のような存在でもなさそうですよね。

サッカーの母国イングランドなどでは、得点を入れて「いい気になっている」選手に対して,サポーターは、燃えるような声援を送って,さらに「いい気にさせて」いるように見えます。どうやら良いプレーに対する賞賛に関しては,青天井のようすです。シャイな日本人にはちょっと無理があるかもしれませんが、サポーターになるにはそんなことは言ってられません。「いい気になった」方がその後もいいプレーをするという法則があることを,サッカー先進国のサポーターはよく知っています。

それではミスったときはどうしているのでしょうか。ブーイング?いえいえ、違います。ブーイングされた選手はその後,頑張っていいプレーをするわけではなさそうです。著名な選手で,自分を応援してくれるはずのサポーターに罵声を浴びせられ、観客席に飛び込んで傷害事件を起こしたようなヒトもいました。どうやら、ブーイングされると選手はサッカー以外のことを考えてしまうようです。少年サッカーにもよく見かけますが、「あ、バカ!」とか「もう!何やってんのよ!」という罵声を受け、ションボリを下を向いてサッカー以外の例えば親子関係のことかなんかで悩み始めちゃった子供にさらに「しっかりしなさい!もう!」とトドメを刺しちゃうケースがあります。ヤレヤレ。

高度なサポーターは、チームの仲間が声をかけるように,選手にも声をかけます。少し専門的になりますが、イングランドでは試合中に "Turn!" "Man on!" という大合唱がスタンドに鳴り響きます。後方から後ろ向きの状態でパスを受けた選手は、もしチャンスならばターンして前を向き、相手ゴールに向かっていくべきです。一方で、そのボールを奪おうと背後から相手選手が寄ってきているときは「後ろに来ている!」という意味の "A man on behind!" を略して "Man on!" と言います。

サッカーを良く知るサポーターで埋められたスタンドでは,歓声で仲間の声が聞き取れないかもしれないと考えるサポーターたちが,あたかも指揮者でもいるがごとく一斉のタイミングで "Turn!" とか"Man on!" と大合唱します。決して選手に命令しているわけではありません。選手の判断を奪うわけでもありません。選手に、周りの状況という情報を提供しているにすぎないのです。しかしみんな楽しそうです。 熱心なサポーターは、試合だけを見に来るわけではなさそうです。

ケガあがりで試合に出れないとか、最近,出場の機会に恵まれない選手もいるでしょう。そんなときは練習場に行って、見守り、そして声をかけます。やっぱり試合と同じように,良いプレーには絶賛の声を上げ、ミスったとしてもブーイングは控えます。

考え深いサポーターは、試合や練習を離れたときでも、選手の成長を考え、できるだけのことをするようです。マックやケンタッキーが名選手を育てるわけはなく,コンビニのポテチのおかげでスゴイシュートを打ったというハナシも聞いた事がありません。スポーツですからケガはつきものですが、大事に至らぬように例えば骨を強くする食物を好きにさせようと努力したり,大きくなりたいと望む選手に栄養バランスを考えたメニューを工夫したりと、
努力を惜しみません。

名手ジダンは言っていました。「最高のサポーターは父親だ」と。いや、母親だっていいんですけどね。ところで父親は何やってますかあ?サポーターならぬ「スポンサー」で満足したりしてませんよね?


シューズの話

ウチの子が「試合で得点を入れた!」とか「最近、すごくサッカーが好きになってきた」といったときに、ご褒美を上げたくなるのが親の心理ですよね。ご褒美、あげてください。遠慮なさらずに。ただし、もし、サッカー用具にお金をかけようというのであれば、服などよりも靴を優先してほしいな、と思います。

ベッカムや中田のレプリカ・ユニフォームは、はっきり言って高価です。それに比較するとシューズは安価です。「どうせすぐ履けなくなる」とか「泥だらけになるからもったいない」と考えずに、シューズを見直してください。スポーツや運動をする場合、シューズは極めて重要です。ジャンプすることが多いバスケットでは、靴底の厚いシューズで膝に対するショックを和らげます。登山靴は足首とかかとを守りますし、陸上のシューズは軽くできています。それぞれ、体の動きと、競技する場所の特性を反映した特長を持っています。では、サッカーはどうでしょうか。サッカーだけがほぼ唯一、体の動き・競技場の特性だけでなく、「ボールを扱う部位」としての足の要求にも応えるよう、考えられています。つまり、サッカーシューズはかなり特別なシロモノなのです。

高学年になるとスパイクを履きますが、これについては必要な時期にコーチから指導があると思いますので、ここではトレーニング・シューズあるいはアップシューズと呼ばれる、練習用のシューズについて述べることにします。靴底に小さなイボイボがたくさんあるシューズのことです。

ちょっと話は変わりますが、子供が信じられない器用さでプレステなどTVゲームの操作盤を手指で動かすことがあります。あるいは、若者が、これも信じられないスピードで携帯メールを打っています。手指は繰り返し「練習する」ことで、人間ワザとは思えぬ器用さを身に付けるものです。でももし、手袋をしてプレステや携帯を操作したとすれば、あれほど器用にはならないものと想像します。

サッカーも同じです。実は、はだしでボールを扱っていると、信じられない器用さが身につくものなのです。南米などの貧しい村から上手な少年たちが無尽蔵に生産?される秘密は、そこにあります。日本ではなかなかハダシでサッカーする環境がありません。そうであれば、できるだけ足にピッタリして、そして靴底が厚くないサッカーシューズを使うことで、ボールの感覚を足で確かめることが重要になってきます。

サッカーシューズは、メーカーによって少しずつ型が違っています。見た目の型ではなく、履いてみてわかる型です。足の甲が高い子供、幅広な足を持つ子供、指が長い子・短い子、指の先が作るラインが平らな子・切れている子など、子供だけではありませんが、足の形は千差万別です。いくつかのメーカーのシューズを試してみると、自分の足に合ったメーカーに出会うものです。高価なシューズが必ずしも良いとは限りません。

また、サッカーが好きになってくると、学校へ行くにもサッカーシューズを履くようになるものと思います。休み時間や放課後に毎日、校庭でサッカーをするような子供は、サッカーシューズをいつも履いているようなことになります。ただし、これは要注意です。サッカーシューズはピッタリするものが良いのです。ピッタリした靴を朝から夕方まで履きつづけていると、どうなるでしょう。足がムレます。水虫になります。水虫は大人だけの病気ではありません。理想的には、放課後にサッカーをするときに靴を履き替えることですが、なかなかそうもいかないでしょう。そうであれば、サッカーシューズを2足あるいは3足と用意する方法があります。1日履いたシューズは休ませるのです、風通しのよいところで。

サッカーが大好きになった子供は、2足あるいは3足のサッカーシューズを毎日履き替えたとしても、足が大きくなって履けなくなる以前に、シューズがボロボロになってその役目を終えます。そんなボロボロのシューズが実は子供にとっての誇らしい宝物なのです。そして、履き比べているうちに、自分の足に合ったメーカーを発見することにもなるのです。

また、もし、ボロボロになる以前に足が急激に大きくなるなどして履けなくなったシューズは、関前の他の子供に差し上げてもいいんじゃないでしょうか。子供同士あるいは親同士のこういった交流も悪くないものと思います。