未発表の文章(佐藤治夫) TOP 本文へジャンプ
被買収(小説) イメージ

人材派遣トップのブリッジ・スタッフィングが買収される、いや、正確には創業者でありオーナーである高橋会長が保有株式を第三者に売却し、事業から身を引くという。

会長に育てられ、抜群の営業成績を続け、昨年取締役に抜擢された元「弾丸支店長」尾崎龍司39歳と、彼の部下であった畑中美和子36歳、数年前に外部から招聘された頭脳派の取締役、近藤圭一47歳の三人を中心に、デューデリから発表、新経営陣の登場、社内の軋轢を描く。

十三年前に美和子が入社した中小企業が、急成長を遂げながらも同時に事業運営の矛盾や問題点を時に解決し、時に抱えたままトップ企業となった。急成長を可能とした組織の勢いを、美和子の記憶とともに過去の事例として表現しつつ、買収劇ならぬ売却劇を同時進行で描写する。

会長にとって身を引いた「潮時」は、龍司にとっては、圭一にとってはどんな「潮時」を意味したのか。成長企業を牽引したタイプの異なる二人の男が何を考えたかを、色恋とは異なる三角関係を構成する美和子の目で描く。