金融庁告示第74号(令和7年7月23日)


第38条(Tier1資本調達手段の額)

前条第1号に掲げるTier1資本調達手段の額は、保険会社等が発行した資本調達手段に係る次の各号に掲げる額の合計額とする。

算入制限のないTier1資本調達手段の額

算入制限のあるTier1資本調達手段の額

2.

前項第1号に掲げる算入制限のないTier1資本調達手段の額は、次の各号に掲げる要件の全てを満たすものの額の合計額とする。

発行者により現に発行され、かつ、払込済みのものであること。

損失が発生した際に他の資本調達手段に先立ち当該損失を吸収する発行済み資本の形態を有するものであること。

残余財産の分配について、最も劣後するものであること。

残余財産の分配について、一定額又は上限額が定められておらず、他の優先的内容を有する資本調達手段に対する分配が行われた後に、当該資本調達手段の保有者が保有する割合に応じて公平に割当てを受けるものであること。

償還期限が定められていないこと。

清算時を除き、法令の規定に基づく買戻し以外の方法で元本が返済されないものであること。

発行者が発行時に、将来にわたり買戻しを行う期待を生じさせず、かつ、当該期待を生じさせる内容が定められていないこと。

剰余金の配当について、発行者の完全な裁量により決定することができ、これを行わないことが発行者の債務不履行となるものでないこと。

剰余金の配当が法令の規定に基づき算定された分配可能額から行われていること。

担保権による担保、保証その他これらに類する保有者を保護するための措置(発行者又は当該発行者と密接な関係を有する者による請求権の優先順位に影響を与えるような保証又は保全を含む。)によって、毀損し、又は法令上若しくは契約上無効とされていないこと。

十一

保険会社等(連結ベースの計算においては連結子会社等以外の子会社等を含む。以下この条において同じ。)により取得されておらず、かつ、取得に必要な資金が保険会社等により直接又は間接に融通されたものでないこと。

十二

発行者の倒産手続(破産手続、再生手続、更生手続又は特別清算手続をいう。以下この章及び別表1において同じ。)に関し、当該発行者が債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。以下この章及び次章第6節において同じ。)にあるかどうかを判断するに当たり、当該発行者の債務として認識されるものでないこと。

3.

第1項第2号に規定する算入制限のあるTier1資本調達手段の額は、次の各号に掲げる要件の全てを満たすものであって、同項第1号に規定する算入制限のないTier1資本調達手段の額に含まれないものの額(ただし、基金以外の資本調達手段であり、ロックイン条項(資本調達手段について、償還期限(ステップ・アップ金利等(あらかじめ定めた期間が経過した後に上乗せされる一定の金利又は配当率をいう。以下この項及び第42条第3項第6号において同じ。)その他の償還等(償還期限が定められていないものの償還又は償還期限が定められているものの期限前償還をいう。以下この項並びに第42条第3項第4号及び第6号において同じ。)を行うインセンティブを伴う償還オプションを有する場合は実質償還期限(資本調達手段について、ステップ・アップ金利等その他の償還等を行うインセンティブを伴う償還オプションが最初に発生する日又は償還期限が到来する日のうちいずれか早い日をいう。第42条第3項及び第4項において同じ。)を含む。)での償還を行った場合に発行者のソルベンシー・マージン比率その他これに類する比率が一定の水準を下回らないこと又は当該償還を行った資本調達手段と同等以上の質の資本調達手段に置き換えられることを、当該償還の条件とする定めをいう。第3号並びに第42条第3項及び第4項において同じ。)を有しない場合であって、かつ、当該実質償還期限までの期間が5年以内になったものについては、貸借対照表等計上額に、基準日から当該実質償還期限までの期間の日数を当該実質償還期限までの期間が5年になった日から当該実質償還期限までの期間の日数で除して得た割合を乗じて得た額とする。)の合計額(以下この章において「算入制限のあるTier1資本調達手段(上限適用前)の額」という。)又は次項に定める算入制限のあるTier1資本調達手段の上限額のうちいずれか小さい額とする。

発行者により現に発行され、かつ、払込済みのものであること。

残余財産の分配又は倒産手続における債務の弁済若しくは内容の変更について、保険契約者、他の非劣後の債権者及び発行者の他の債務(Tier2資本調達手段の額に含まれる債務を含み、Tier1資本調達手段の額に含まれる債務を除く。)に対して劣後的内容を有するものであること。

償還期限が定められていないこと。ただし、報告保険会社等が相互会社であって、資本調達手段が基金であること又はロックイン条項を有していること、かつ、発行時から償還期限までの期間が10年以上のものであることを満たすときは、この限りでない。

ステップ・アップ金利等に係る特約その他の償還等を行う蓋然性を高める特約が定められていないこと。

償還等を行う場合には、発行後5年を経過した日以降に発行者の任意による場合に限り償還等を行うことが可能であり、かつ、償還等に際し、発行者の保険金等の支払能力の充実の状況について、あらかじめ金融庁長官の確認を受けるものとなっていること、又は発行後5年を経過した日より前の償還等であって、次のイ又はロに掲げる場合のいずれかに該当するものであること。

次に掲げる要件の全てを満たす場合

(1)

発行者の任意による場合に限り償還等を行うことが可能であること。

(2)

償還等に際し、発行者の保険金等の支払能力の充実の状況について、あらかじめ金融庁長官の確認を受けるものとなっていること。

(3)

発行時に合理的に予期できなかった税制上又は規制上の事由であって著しく影響の大きいものによる償還等であること。

次に掲げる要件の全てを満たす場合

(1)

発行者の任意による場合に限り償還等を行うことが可能であること。

(2)

償還等に際し、発行者の保険金等の支払能力の充実の状況について、あらかじめ金融庁長官の確認を受けるものとなっていること。

(3)

償還等に際し、発行者が償還等の経済合理性について、あらかじめ金融庁長官の確認を受けるものとなっていること。

(4)

償還等以前において、償還等される資本調達手段と同等以上の質が確保されるものに置き換えられ、かつ、当該置換えが収益力に対して持続可能な条件で行われるものであること。ただし、資本調達手段が基金の場合は、この限りでない。

買戻しに際し、発行者の保険金等の支払能力の充実の状況について、あらかじめ金融庁長官の確認を受けるものとなっていること。

発行者が発行時に将来にわたり償還等又は買戻しを行う期待を生じさせず、かつ、当該期待を生じさせる内容が定められていないこと。

剰余金の配当又は利息の支払の先送り又は停止について、次のイからハまでに掲げる要件の全てを満たすものであること。

剰余金の配当又は利息の支払の停止を発行者の完全な裁量により常に決定することができること。

剰余金の配当又は利息の支払を回避した場合は、発行者は永久的にその支払義務から解放されること。

剰余金の配当又は利息の支払の停止を決定することが発行者の債務不履行とならないこと。

剰余金の配当は、法令の規定に基づき算定された分配可能額から行われていること、又は利息の支払については法令の規定に基づき算定された分配可能額を超えない範囲内で行われていること。

剰余金の配当額又は利息の支払額が、発行後の発行者の信用状態を基礎として算定されるものでないこと。

十一

担保権による担保、保証その他これらに類する保有者を保護するための措置(発行者又は当該発行者と密接な関係を有する者による請求権の優先順位に影響を与えるような保証又は保全を含む。)によって、毀損し、又は法令上若しくは契約上無効とされていないこと。

十二

保険会社等により取得されておらず、かつ、取得に必要な資金が保険会社等により直接又は間接に融通されたものでないこと。

十三

発行者の倒産手続に関し当該発行者が債務超過にあるかどうかを判断するに当たり、当該発行者の債務として認識されるものでないこと。

十四

ある特定の期間において他の資本調達手段が発行価格に関して有利な条件で発行された場合には補償が行われる特約その他の発行者の資本の増強を妨げる特約が定められていないこと。

十五

特別目的会社等(専ら保険会社等の資本調達を行うことを目的として設立された連結子会社等をいう。第42条第3項第11号において同じ。)が発行する資本調達手段である場合には、発行代り金を利用するために発行される資本調達手段が前各号に掲げる要件の全てを満たし、かつ、当該資本調達手段の発行者が発行代り金の全額を即時かつ無制限に利用可能であること。

4.

算入制限のあるTier1資本調達手段の上限額は、次の各号に掲げる額とする。

次のイ及びロに掲げる額の合計額

次章に定める所要資本の額に10%を乗じた額

前項に規定する算入制限のあるTier1資本調達手段(上限適用前)の額からイに掲げる額を控除した額(当該額が0を下回る場合には、0とする。)、元本損失吸収メカニズムを有する算入制限のあるTier1資本調達手段の額又は次章に定める所要資本に5%を乗じて得られた額のうち最も小さい額

前号の規定にかかわらず、報告保険会社等が相互会社である場合には、次章に定める所要資本の額に30%を乗じた額

5.

前項第1号ロの「元本損失吸収メカニズムを有する算入制限のあるTier1資本調達手段の額」は、第3項に規定する算入制限のあるTier1資本調達手段(上限適用前)の額のうち、ソルベンシー・マージン比率が一定の水準を下回ったときにソルベンシー・マージン比率が当該水準を上回るために必要な額又は元本の全額の削減又は第2項に規定する算入制限のないTier1資本調達手段への転換が行われる特約その他これに類する特約が定められているものの合計額をいう。


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