金融庁告示第74号(令和7年7月23日)


第167条(統計的品質基準)

第162条第1号に掲げる「統計的品質基準」とは、次の各号に掲げるものをいう。

計算手法及び計算前提の妥当性

重要なリスクの捕捉

データ及びエキスパート・ジャッジメント(統計的、経験的その他の客観的な証拠のみでは1意に選択又は設定することが困難なデータ、前提条件又は計算手法を、保険数理、リスク管理その他の関連領域の専門家の経験又は知見を基に決定する判断行為をいう。以下この章において同じ。)の管理方針の整備

リスクの統合及び分散効果の適切性

保険負債の計算手法との整合性の確保

リスク削減手法の認識及びマネジメント・アクションの考慮

内部モデル手法による予測と実績の比較

部分内部モデル手法の妥当性(ただし、部分内部モデル手法を採用している場合に限る。)

2.

前項第1号に掲げる「計算手法及び計算前提の妥当性」とは、次の各号に定めるものをいう。

内部モデル手法において、基礎となる定量的な計算手法が一般に用いられる市場の慣行、頑健な保険数理及び統計理論に沿っていること。

内部モデル手法において、選択された計算手法がリスク及び事業の性質、規模及び複雑性に照らして適切であること。

内部モデル手法において、使用される計算手法が最新、かつ、信頼できる情報及び現実的な仮定に基づいていること。

内部モデル手法において、主要な仮定が理論的かつ経験的に妥当であること。

内部モデル手法において、前提条件の作成手法が適切な保険数理及び統計理論に沿っていること。この場合において、当該前提条件が最新かつ合理的なものであり、検証されていること。

3.

第1項第2号に掲げる「重要なリスクの捕捉」とは、内部モデル手法を適用する範囲において、保険会社等がさらされる全ての重要で定量化可能なリスクを当該内部モデル手法の計測対象としていることをいう。

4.

第1項第3号に掲げる「データ及びエキスパート・ジャッジメントの管理方針の整備」とは、次の各号に定めるものをいう。

内部モデル手法の利用において、次のイ及びロに定める要件を確保するためのデータ管理方針を適切に整備していること。

内部モデル手法において使用されるデータが、最新かつ十分な信頼性を有し、正確、完全かつ適切なものであること。

自社固有ではないデータを内部モデル手法において使用する場合には、当該データの限界を理解するとともに、自社ポートフォリオのリスク特性と整合的であるかを確認し、かつ、必要に応じて当該データを調整して使用していること。

内部モデル手法の利用において、次のイからハまでに定める要件を確保するためのエキスパート・ジャッジメント管理方針を適切に整備していること。

エキスパート・ジャッジメントが十分な適格性(経歴及び関連する業務に従事した年数を含む。)を有する専門家によって、その影響度も踏まえ、十分な根拠に基づき実施されていること。

不確実性及び影響度に応じ、エキスパート・ジャッジメントに関する経営管理態勢が整備されていること。

エキスパート・ジャッジメントが、重要性に応じ、経営管理上十分に上位のレベルで承認されていること。

5.

第1項第4号に掲げる「リスクの統合及び分散効果の適切性」とは、内部モデル手法を適用する範囲のリスクにおいて、ストレス状況下においてリスク間の従属関係が変化する可能性を考慮し、分散効果を適切に反映していることをいう。

6.

第1項第5号に掲げる「保険負債の計算手法との整合性」とは、内部モデル手法が、第3章第2節及び第3節に規定する計算方法と整合的なものとなっていることをいう。ただし、当該計算方法と整合的でない合理的な理由がある場合はこの限りでない。

7.

第1項第6号に掲げる「リスク削減手法の認識及びマネジメント・アクションの考慮」とは、次の各号に定めるものをいう。

第49条から第52条までの規定(第50条第1項第6号及び第51条第2項を除く。)を、内部モデル手法におけるリスク削減手法について準用すること。この場合において、第49条第1項中「第45条第1項第1号イ(1)から(3)までに掲げるリスクの額の計算」とあるのは「内部モデル手法(市場リスクに係るものを除く。)」と、第49条第1項第6号中「リスク削減手法の提供者が、契約当事者間で特定された事由において確実にプロテクションを提供できるように、十分な適格格付機関の格付、資本水準又は担保設定水準のいずれかを通じて実証可能と言える十分な信用力を有すること」とあるのは「リスク削減手法の提供者の信用力が考慮されていること」と、第49条第2項中「第45条第1項第1号イ(4)に掲げる市場リスクの額の計算」とあるのは「内部モデル手法(市場リスクに係るものに限る。)」と、第50条第2項中「同項第6号におけるリスク削減手法の残存期間」とあるのは「内部モデル手法」と読み替えるものとする。

第13条第10項の規定を、内部モデル手法におけるマネジメント・アクションについて準用すること。

8.

第1項第7号に掲げる「内部モデル手法による予測と実績の比較」とは、実務上可能な範囲で適切な手法に基づいた内部モデル手法による予測と実績を比較するプロセス(バック・テスト(内部モデル手法により算出した結果と実際の損益との比較により当該内部モデル手法の実効性を確認することをいう。)を含む。)を実施していることをいう。

9.

第1項第8号に掲げる「部分内部モデル手法の妥当性」とは、次の各号に定めるものをいう。

部分内部モデル手法採用社(内部モデル手法採用社であって、部分内部モデル手法を使用する報告保険会社等をいう。次号において同じ。)が当該部分内部モデル手法を採用する理由が妥当であり、かつ、意図的に所要資本の額を過小評価しようとするものでないこと。

部分内部モデル手法採用社の当該部分内部モデル手法を適用する範囲内の所要資本の額の計算結果と当該範囲外の所要資本の額の計算結果との統合方法が妥当であること。


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